日本臨床外科学会雑誌
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症例
大網が嵌頓と自然還納を繰り返した左閉鎖孔ヘルニアの1例
北川 光一石塚 直樹小松 永二森 潔山本 雅一
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2008 年 69 巻 10 号 p. 2717-2720

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抄録

症例は62歳,女性.半年前より10日に1回程度,数時間の左骨盤部激痛発作を繰り返し,近医婦人科にて精査するが,異常を認めず原因不明とされた.その後も症状を繰り返し,近医にて腹部MRI検査施行.左恥骨筋と外閉鎖筋の間にT1強調画像T2強調画像にて高信号の腫瘤性陰影を認め,当院紹介受診.当院腹部CTでも同部位に腫瘤性陰影を認めた.臨床経過,画像所見より大網等が脱出,自然還納を繰り返した閉鎖孔ヘルニアと診断した.開腹手術施行.開腹時所見にて左閉鎖孔部位にヘルニア開口部を認め,臓器の嵌頓は認めなかった.Richter型ヘルニアに見られる小腸狭窄は認めず,卵巣も固定されており,小腸や卵巣の嵌頓であった可能性は低いと考えられた.大網は骨盤部まで下垂しており,大網の閉鎖孔ヘルニアであったことが最も考えられた.閉鎖孔ヘルニア根治術を施行した.術後症状は改善しており,左閉鎖孔ヘルニアに大網等が嵌頓自然還納を繰り返し,疼痛発作の原因となっていたと考えられた.通常,閉鎖孔ヘルニアは小腸の嵌頓イレウスで発症し診断されることがほとんどであり,本症例のように発症から半年間イレウス症状なく,疼痛発作症状を繰り返し,術前に診断された症例は稀であり報告する.

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© 2008 日本臨床外科学会
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