日本臨床外科学会雑誌
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症例
虚血性小腸炎による腸閉塞の1例
五本木 武志小形 岳三郎中野 順隆飯田 浩行軍司 直人折居 和雄
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2009 年 70 巻 7 号 p. 2013-2016

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抄録

長期間高血圧症と大動脈硬化を有する83歳男性がイレウスにて入院した.腹部CT検査にて回腸に局所性の肥厚による小腸閉塞所見がみられ,イレウス管挿入により症状は軽快したが,経口摂取再開によりイレウス症状が再発した.小腸閉塞部を切除する目的で回腸終末より約30cmの部位の部分切除を行った.切除小腸には2つの潰瘍性病変がみられ,その部の腸管壁は線維性に肥厚し腸管を閉塞していた.組織学的検索では,潰瘍性病変は粘膜層を保持したまま粘膜の全上皮が壊死消失し,粘膜に限られた炎症性細胞浸潤がみられる境界明瞭な病巣で,高度な虚血性小腸炎の病理像を示した.さらに,潰瘍直下の腸間膜の小動脈には,器質性血栓による完全な閉塞像がみられた.本症例は動脈硬化症を背景として血栓塞栓による虚血性小腸炎をきたした稀な症例と考えた.高齢者のイレウスには本例のような発症機序が存在することを留意すべきと思われた.

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