日本臨床外科学会雑誌
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症例
肝膿瘍を合併した直腸癌の1例
片山 知也菊地 健植村 一仁伊藤 美夫宇根 良衛
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キーワード: 大腸癌, 肝膿瘍
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2009 年 70 巻 10 号 p. 3074-3079

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抄録

肝膿瘍を契機に発見された直腸癌の1例を経験したので報告する.症例は66歳,男性.発熱,嘔吐を主訴に当院受診.血液検査にて高度の炎症所見,肝胆道系酵素の上昇とともに貧血症状がみられたため,腹部超音波および腹部CT検査を施行したところ肝外側区を中心とした多発性の低吸収域が認められた.多発性肝膿瘍と診断し,抗生剤投与および経皮経肝膿瘍ドレナージを施行.原因検索として下部消化管精査を行ったところ,直腸に1型腫瘍を認め,生検の結果は中分化型腺癌であった.これらに対し低位前方切除術および肝外側区切除術を施行.病理診断から,原発巣はtub2,ss,ly1,v0,n0,stageIIであった.また肝に転移所見はなく,肝膿瘍の原因として大腸癌からの経門脈的感染が推測された.以上より肝膿瘍の診断,治療においては,原因疾患として大腸癌の可能性も念頭においた下部消化管精査が必要であると考える.

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© 2009 日本臨床外科学会
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