日本臨床外科学会雑誌
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原著
急性胆嚢炎に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術の検討
田畑 智丈藤村 昌樹佐藤 功舛田 誠二千野 佳秀沖田 充司弓場 孝郁
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2010 年 71 巻 9 号 p. 2236-2242

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抄録

目的:急性胆嚢炎に対し腹腔鏡下胆嚢摘出術(laparoscopic cholecystectomy,LC)を行った症例を検討し,急性胆嚢炎の重症度別にLCの有用性と問題点を明らかにする.対象と方法:2004年6月から2009年11月までに筆者らの施設でLCを施行した急性胆嚢炎122症例を対象とした.対象を胆嚢炎の重症度と手術時期(早期手術例:early operation,E0と待機手術例:delayed operation,D0)で分類し,患者背景,手術成績,術後在院日数,合併症,病理組織検査結果などを検討した.結果:重症群64例(EO:43例,DO:21例),中等症群40例(EO:34例,DO:6例),軽症群18例(EO:14例,DO:4例)であった.開腹移行となった症例を重症DO群に2例認めた.「患者年齢」,「術前白血球数」,「術前CRP値」,「手術時間」,「出血量」は重症群で有意に増加した.「術後在院日数」は3群間に有意差を認めなかった.手術時期別に「手術時間」,「出血量」,「術後在院日数」を検討したところ,重症群ではEO例に比してDO例の「手術時間」と「出血量」が有意に増加し,中等症群ではEO例に比してDO例の「手術時間」が有意に増加した.重篤な術中合併症は認めなかった.術後合併症は重症群に6例(9.3%),中等症群に1例(2.5%)認めたが,いずれも保存的に軽快した.病理組織学的検査で重症群に進行胆嚢癌を5例認めた.結論:軽・中等症の急性胆嚢炎に対するLCの手術成績は非常に良好であり有用である.重症例では可及的速やかにLCを施行することで手術時間と出血量,開腹移行例を減少させると考えられるが,高い手術難易度と術前診断困難な胆嚢癌の問題があるため,慎重な対応が要求される.

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