日本臨床外科学会雑誌
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原著
乳癌に対する腋窩下部部分郭清
児玉 宏三瀬 圭一菅 典道
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2010 年 71 巻 12 号 p. 3031-3038

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抄録

乳癌手術において,腋窩郭清をどこまで縮小できるかを検討するため,N0乳癌症例に対して,levelIの肋間上腕神経より下部のみを郭清する腋窩下部部分郭清を施行した.2001年1月から2008年12月の腋窩下部部分郭清施行N0 1043例を対象として,腋窩再発率,生存率と健存率,術後合併症につき,1994年から2000年のlevelI以上の郭清施行N0 1084例と比較検討した.部分郭清症例のリンパ節転移陽性は222例(21.3%),観察期間中央値72カ月,5年follow-up率99.2%で,再発症例を101例(9.7%)に認め,うち腋窩リンパ節再発は6例(0.6%)のみであった.部分郭清症例の5年生存率と健存率は95.3%,88.3%であり,以前の系統的腋窩郭清症例に劣らず良好であった.部分郭清症例の術後リンパ液貯留量は著明に減少し,術側上肢のリンパ浮腫を1例も認めなかった.腋窩下部部分郭清は乳癌患者に有益な腋窩アプローチである.

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© 2010 日本臨床外科学会
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