2011 年 72 巻 4 号 p. 880-883
症例は74歳,男性.食道癌にて右開胸開腹胸部食道切除術および胃管を用いた胸骨後経路による再建の既往あり.2008年11月,呼吸困難を主訴に受診,両側気胸,縦隔気腫,皮下気腫と著明な気腹を認め入院となった.腹膜刺激症状はなく血液検査でも炎症所見はなかった.緊急手術の適応はないと判断,胸腔ドレナージ,抗生剤併用にて経過観察とした.肺の拡がりは良好で経口摂取も可としたが問題はなかった.しかし2週間を経過しても気瘻が持続,CTにて中葉にbullaを認めたため手術の方針とした.CT所見通りbullaを認め破裂孔も明らかであり切除した.横隔膜近傍には,胸膜に覆われず,周囲との癒着がない胃管を確認することができた.今回の所見は,右自然気胸により発生したairが胃管周囲を経由し,腹腔,縦隔,対側胸腔に至った結果であると考えられた.検索の範囲で,同様の本邦報告例は1例のみであった.考察を加えて報告する.