2006 年 26 巻 3 号 p. 272-276
恒久的ペースメーカー心筋電極植え込み術の麻酔中に心室細動をきたした症例を経験した. 症例は53歳, 女性. 高度房室ブロックに対し, 恒久的ペースメーカー心筋電極植え込み術を全身麻酔下に直視下で行った. 三尖弁閉鎖不全のため一時的経静脈ペーシングリードは挿入していなかった. 心嚢表面の脂肪を電気メスで剥離していたところ, 突然心室細動となった. 初回, 200ジュールの除細動で自己心拍が再開し, 緊急に一時的経静脈ペーシングを開始した. 以後, 循環動態は安定し, 手術は終了した. 無症状の2度 II 型 (Mobitz II 型2度) ~3度の房室ブロックはスタンバイペーシングが基本であるが, 手術など血行動態の変動が予想される場合は, あらかじめ一時的ペーシングを行っておくことが望ましいと思われた.