日本輸血細胞治療学会誌
Online ISSN : 1883-0625
Print ISSN : 1881-3011
ISSN-L : 1881-3011
報告
地方病院における大量輸血対応体制の構築と血液の有効利用
竹下 明裕浅井 隆善村上 勝藤原 晴美石塚 太三江中井 さやか山田 千亜希鈴村 妙子内山 幸則前川 真人重野 一幸鷲山 直己山下 克司海野 直樹新庄 香
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 55 巻 1 号 p. 63-67

詳細
抄録

地方病院の輸血部門においては,安全性や経済性を考慮した積極的な取り組みは重要な課題である.本研究では大量輸血への対応体制を構築し,術者,輸血部門そして血液センター(BC)との連絡を緊密にし,輸血製剤の有効利用を目指すとともに術者の安心感を得ようとした.BC側には通常の輸血用血液の時間的,量的な情報以外に緊急性と追加発注の可能性を伝えた.術者には各血液製剤がどのくらいの時間で術者の手元に届くかを明確にした.対象は赤血球で約10単位以上の大量輸血が必要とされる手術例99例で,心臓血管手術が94%を占めた.血液の追加発注は30%に認められ,供給上の問題点を認めなかった.術者の理解とともに,大量輸血対応は順調に増加し,82%の外科医の安心感を向上させた.また輸血の返納血は有意に減少し,製剤単位数から算出された全体廃棄率は1.6%から0.4%にまで低下した.病院内の輸血部門の重要性を再確認し,地方の輸血供給にも配慮した視点に立った体制を構築していく必要性がある.

著者関連情報
© 2009 日本輸血・細胞治療学会
前の記事
feedback
Top