日本臨床免疫学会会誌
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総説
糖鎖結合蛋白ガレクチン9による樹状細胞成熟化
山内 清明Shu-Yan DAI中川 竜介加塩 裕美子安部 博子加藤 茂樹紺谷 桂一平島 光臣
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2005 年 28 巻 6 号 p. 381-388

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抄録

  樹状細胞の成熟は免疫反応の初段階で極めて重要で,種々のシグナルにより制御されている.今回我々はガレクチン9の樹状細胞成熟化における役割を検討したので報告する.ガレクチン9とはタンデムリピート構造を有するベータガラクトシド結合蛋白で,リンカー部分の長さの違いにより分子量の異なる3種類のガレクチン9が存在する.ガレクチン9は当初好酸球遊走因子として同定されたが,その後アポトーシス,細胞接着,がんの転移などに関与することが判明した.今回の研究では未熟なヒト樹状細胞の培養系にガレクチン9を添加すると,CD40, CD54, CD80, CD83, CD86, HLA-DRの発現が増加した.しかし,単球を未熟樹状細胞にする作用は僅かであった.またガレクチン9処理した樹状細胞はIL-12を分泌しCD4陽性リンパ球からのTh1サイトカインの産生を誘導した.さらにシグナル伝達経路を検討したところガレクチン9は樹状細胞成熟化機構としてMAPKp38やERK1/2のリン酸化を誘導した.これらからガレクチン9は自然免疫ばかりでなく樹状細胞成熟化やTh1サイトカイン産生誘導など獲得免疫にも重要であることが示唆されたので解説する.

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© 2005 日本臨床免疫学会
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