日本臨床免疫学会会誌
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総説 特集:特異抗原をターゲットとしたImmunotherapy
MucoRice:コメ発現システムを応用した経口ワクチン開発
幸 義和清野 宏
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2008 年 31 巻 5 号 p. 369-374

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抄録

  感染症に対する多くのワクチンは注射による投与が一般的である.しかし注射型ワクチンは全身系における防御免疫を誘導するが,エイズ,SARS(重症急性呼吸器感染症)及びインフルエンザのような多くの粘膜感染症に対する第一次防御網である粘膜免疫は誘導できない.加えて,発展途上国ではワクチンの冷蔵保存(コールドチェーン)がコスト負担になり大きな問題のひとつになっている.これらの問題を克服するためには,植物生産型ワクチンは魅力的な選択肢の一つである.ここで,我々は,既存ワクチンを超える優位性をもつコメ型ワクチンMucoRiceを開発した.発現されたコレラトキシンB鎖はコメの胚乳細胞に存在する蛋白質貯蔵体に蓄積しており,マウスに経口投与された場合,腸管の粘膜誘導組織パイエル板の抗原取り込み細胞であるM細胞から取り込まれて,毒素中和活性を持つ抗原特異的血清IgG及び粘膜IgAを誘導する.またこのMuocRice CTBは室温保存状態で1年半以上安定であり,且つ試験管内ペプシン消化実験で消化酵素耐性を示す.即ち,MucoRiceはコールドチェーンも注射筒・針も必要とせず,全身系と粘膜系の2段構えの防御免疫を誘導可能な,新興再興感染症を制圧できる世界規模仕様ワクチンであること示している.

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© 2008 日本臨床免疫学会
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