日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
総説
抗シトルリン化ペプチド抗体陰性関節リウマチは遺伝的背景の異なるサブセットである?
大村 浩一郎
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 32 巻 6 号 p. 484-491

詳細
抄録

  近年,抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)によって関節リウマチ(RA)は2つのサブセットに分かれると報告されている.臨床的にACPA陽性RAのほうがACPA陰性RAよりも重症化しやすいだけでなく,遺伝的にもこれまで報告されてきた遺伝子の多く(PTPN22, TRAF1/C5, CTLA4など)がHLAを含めてACPA陽性RAとは関連するが,ACPA陰性RAとは関連しないことがわかってきた.またRAの発症に関連するとされたHLA-DRB1*04などは実はACPA産生に関わっているのであり,RA発症のprimaryなリスクファクターはHLAではなくACPAであることが示されてきている.そこで,ACPA陽性RAの発症機序は感受性HLAと感受性遺伝子をもつ患者が喫煙などの影響でシトルリン化蛋白が出現し,ACPAが産生され,抗体依存性に関節炎がおこるというひとつのシナリオができている.一方,ACPA陰性RAと関連する遺伝子の報告はまだ少なく,HLAにおいては白人でHLA-DRB1*03,日本人でHLA-DRB1*0901が,HLA以外ではIRF5, STAT4が報告されているにすぎない.今後,RAの病態を理解する上でACPA陽性RAと陰性RAを分けて検討する必要がある.

著者関連情報
© 2009 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top