2009 年 32 巻 6 号 p. 492-498
症例は23歳女性.2007年5月にループス腎炎と診断され,プレドニゾロン(PSL)30 mg/日の治療が開始された.PSL 20 mg/日に減量後,肺膿瘍を合併したため,2008年3月当科転院となり,抗生剤投与にて軽快した.ニューモシスチス肺炎予防のためST合剤投与を開始したが,その1週間後に高フェリチン血症を伴う発熱・肝機能障害・血小板減少傾向を認めた.血球貪食症候群への移行を懸念し,ステロイドパルス療法および後療法として,PSL 50 mg/日の投与を開始した.速やかに改善を認めたが,中止していたST合剤を再開したところ,同日に発熱,頭痛,顔面紅潮,血圧低下を呈した.抗生剤投与とともに,循環動態の維持治療を実施し3日後に回復を認めた.しかし1週間後にST合剤の再投与を試みたところ,同様の症状と意識障害を呈した.髄液検査から,無菌性髄膜炎と診断した.入院後の3回の発作はいずれもST合剤によるアレルギー反応であると判断した.ST合剤は,免疫抑制療法中の感染予防のため近年汎用されているが,稀に無菌性髄膜炎やアナフィラキシーを惹起することが報告されており,予防投与に際しては念頭に置くべきであると考えられた.