日本臨床免疫学会会誌
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総説
慢性大腸炎におけるFTY720の新たな作用機序
藤井 俊光渡辺 守
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2009 年 32 巻 1 号 p. 7-14

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抄録

  FTY720はリンパ節からのT細胞の移出を阻害し,病原性T細胞が炎症組織へ移行するのを抑制することによって免疫抑制作用を発揮する.炎症性腸疾患は腸管指向性である腸炎惹起性メモリーCD4+ T細胞が炎症局所に移行し腸炎を誘導すると考えられているが,FTY720がナイーブ細胞のみならずメモリー細胞をもその動態を制御しうるか,さらに二次リンパ組織のない環境においてもT細胞の循環動態を制御するかどうかはわかっていない.我々は腸炎惹起性CD4+エフェクター・メモリーT(TEM)細胞をSCIDマウスに移入する腸炎モデルにおいてFTY720が腸炎を抑制することを確認した.また二次リンパ系組織欠損マウスを作成し,これに腸炎惹起性CD4+ TEM細胞を移入する腸炎モデルにおいてFTY720が循環リンパ球減少と骨髄中CD4+ T細胞の有意な増加を誘導し,腸炎を抑制することがわかった.これらより,FTY720は骨髄にCD4+ TEM細胞を隔離し腸炎を抑制するという新たな機序が示唆された.本稿ではFTY720の作用機序および腸管免疫について概説し,我々の見いだしたFTY720の新たな作用機序について紹介する.

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© 2009 日本臨床免疫学会
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