日本臨床免疫学会会誌
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総説
自己炎症疾患としてのベーチェット病
石ヶ坪 良明寒川 整
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2011 年 34 巻 5 号 p. 408-419

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抄録

  ベーチェット病は口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍,皮膚症状,眼症状,外陰部潰瘍を主症状とする全身性炎症性疾患である.ベーチェット病の原因は未だ不明だが,HLA-B51抗原陽性率が優位に高く,一部のStreptococcusに対する免疫反応においてインターロイキン2(IL-2),インターフェロンγ(IFN-γ)といったTh1優位のサイトカイン上昇を認めTh1型自己免疫疾患と考えられている.
  一方で,ベーチェット病の病巣部では好中球優位の炎症細胞浸潤を伴う所見が認められ,病態の主要な役割を好中球が担うことも示唆されている.近年注目されている自己炎症疾患の病態は遺伝子異常による好中球機能亢進が原因と考えられており,ベーチェット病との関連が注目されている.その理由として,自己炎症疾患では口腔内アフタ性潰瘍やぶどう膜炎,陰部潰瘍といったベーチェット病で特徴的とされる症状を伴うことが多く,治療方法も一部共通していることが挙げられる.
  ベーチェット病と自己炎症疾患の関連性を示唆する所見は多いが,ベーチェット病では免疫抑制薬が有効であり,自己炎症のみならず自己免疫の病態も関与していると考えられる.
  ベーチェット病の自己免疫に関する視点では,最近ではTh1だけでなくTh17の関与も注目されており,大規模ゲノム解析ではTh17関連の疾患感受性遺伝子が同定されている.
  一方で,ベーチェット病に対する新たなIL-1β阻害薬の有効性が報告され,ベーチェット病の病態については今後さらなる解析が必要である.現在,国内外の大規模ゲノム解析からベーチェット病疾患感受性遺伝子が同定されており,今後の発症機序の解明や治療の向上が期待されている.

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