日本臨床免疫学会会誌
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原著
不明熱・不明炎症の原因としての悪性リンパ腫の重要性
山下 裕之高橋 裕子狩野 俊和金子 礼志三森 明夫
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2012 年 35 巻 2 号 p. 136-143

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抄録

  背景:不明熱の原因スペクトラムは診療科により大きく異なる可能性がある.一方で不明熱を呈する悪性疾患として悪性リンパ腫が様々な原因や症状を伴い膠原病科に入院してくることが多々みられる.
  対象:2006年5月~2011年5月まで過去5年間で,膠原病科入院前診断が未分類だった炎症性疾患246例を対象とした.
  結果:症例246患者の内訳は,感染症76例,リウマチ性疾患116例,固形癌8例,薬剤熱9例,その他10例で残り27例において悪性リンパ腫が疑われた.そのうち,20例(B細胞性12例(うち血管内リンパ腫5例),T細胞性5例,Hodgkin 3例)が実際に悪性リンパ腫であった.その入院理由の内訳は,基礎疾患が膠原病:6例,不明熱精査目的:8例,膠原病を疑わせる症状:6例であった.殆どの症例は臨床症状として,B症状を含む発熱を認め,IVLBCLにおいては低酸素血症や血球貪食症候群を多く認めた.診断方法としては,18fluorodexyglucose-positron emission tomography and computed tomography(FDG-PET/CT)にて生検部位を決定したものが13例,IVLBCL5例中3例はランダム皮膚生検で診断がついた.B細胞リンパ腫や末梢T細胞リンパ腫のLabo dataに関しては,血小板減少,LDH高値,可溶性インターロイキン2レセプター上昇を認める傾向にあり,特にIVLBCLではフェリチン高値を他のB細胞リンパ腫より多く認めた.
  結論:膠原病科における想定外の不明炎症の原因で,悪性リンパ腫が最上位を占め,FDG-PET/CTが生検部位選択に有用だった.血管内リンパ腫が稀でなく,臨床的特徴とランダム皮膚生検が迅速診断に有用だった.

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© 2012 日本臨床免疫学会
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