日本臨床免疫学会会誌
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総説
シェーグレン症候群患者末梢血B細胞におけるアダプター分子Act1の発現異常
中川 靖子片岡 浩栗田 崇史中川 久子保田 晋助堀田 哲也渥美 達也小池 隆夫
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2012 年 35 巻 1 号 p. 75-80

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抄録

  シェーグレン症候群(Sjögren's syndrome;以下SS)は,外分泌腺に対する自己免疫反応による腺組織の破壊と機能障害から生じる眼・口腔などの乾燥症状を主症状とし,同時に抗SS-A・SS-B抗体などの自己抗体産生や高γグロブリン血症が認められる自己免疫疾患である.その背景として,SS患者末梢血B細胞の異常活性化や形質細胞への過剰分化が指摘されている.
  アダプター分子NF-kB activator 1(Act1)はCD40-B cell-activating factor belonging to the tumor necrosis factor family receptor(BAFFR)を介したB細胞の分化生存に対する抑制因子でありSSのB細胞異常活性化に関与する可能性が考えられる.Act1欠損マウスがヒトのSSに類似した臨床,病理所見,免疫異常を呈することは,これを示唆している.そこでSS患者の末梢血B細胞におけるAct1発現とSSの病態生理に関連が認められるかを検討した.
  その結果,SS患者末梢血B細胞におけるAct1mRNA発現が健常人に比べ有意に低下しており,その相対的発現量は血清IgG値と逆相関していた.このSS患者B細胞におけるAct1mRNA発現の低下により,CD40あるいはBAFFRシグナル経路の抑制解除によるB細胞の活性化および形質細胞への過剰分化が促進され,自己抗体産生や高γグロブリン血症などが生じ,SSの病態形成へとつながる可能性が考えられた.

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© 2012 日本臨床免疫学会
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