日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
総説
粘膜治癒・長期予後の面からみた難治性炎症性腸疾患の治療戦略
長沼 誠藤井 俊光渡辺 守
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 35 巻 2 号 p. 99-106

詳細
抄録

  潰瘍性大腸炎とクローン病は原因不明であり再燃と寛解を繰り返す難治性炎症性腸疾患である.従来5-アミノサリチル酸製剤,栄養療法,副腎皮質ステロイド剤,チオプリン製剤(アザチオプリン)が治療の中心であったが,近年新しい免疫抑制剤であるタクロリムスや抗TNFa抗体製剤であるインフリキシマブやアダリムマブが開発され,臨床の現場で使用可能となっている.最近では作用機序の弱い薬剤から強い薬剤へステップアップする治療法より抗体製剤のような強力な治療法を早期に導入するトップダウン療法が徐々に行われるようになってきている.抗体製剤は単に症状を改善させるだけでなく,再燃率や手術率の低下にも寄与している.また消化管の粘膜治癒が短期および長期予後を改善することより,粘膜治癒を目標とした治療戦略がより重要になってきている.抗体製剤は潰瘍性大腸炎とクローン病患者に有用である一方で治療効果が減弱する2次無効例が問題であり,インフリキシマブの中和抗体や血中インフリキシマブトラフ濃度測定が2次無効症例の治療を検討していく上で役にたつ可能性がある.

著者関連情報
© 2012 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top