日本透析医学会雑誌
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原著
冠動脈造影による造影剤腎症に対する予防的持続血液透析の有用性に関する検討
佐藤 一賢浅香 充宏中川 卓今村 秀嗣横山 仁石川 勲
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2009 年 42 巻 3 号 p. 237-243

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抄録

腎機能障害者に対して造影剤投与を行う場合,造影剤腎症(radiocontrast nephropathy:RCN)の発症が大きな問題となる.RCNを予防する目的で,従来造影剤投与後に血液透析が行われてきたがその有用性は明らかではなく,血液透析による循環動態の悪化が腎機能へ悪影響を及ぼす可能性すら指摘されている.血行動態への悪影響がより軽微である持続的血液透析(continuous hemodialysis:CHD)を造影剤投与前から行うことでRCNの予防が可能かどうかをretrospectiveに検討した.対象は2002年1月から2004年9月までの間に金沢医科大学病院で冠動脈造影を施行した症例のうち,血清クレアチニン値(S-Cr)が1.5 mg/dL以上の保存期腎機能障害患者47例である.うち9例に対しては,造影剤投与直前から投与終了後2~3時間までCHDを行った(施行群).残りの38例ではCHDを施行しなかった(非施行群).造影剤投与後72時間以内にS-Crが前値と比較して25%以上上昇したものをRCNと定義し,この2群間でRCNの発症頻度を比較した.両群間で年齢,糖尿病罹患率,および造影剤投与量に差はなかったが,造影剤投与前のS-Crは施行群で高値であった(2.2±0.9 vs. 1.7±0.4 mg/dL,p<0.01).造影剤投与後,S-Crは両群ともにわずかに上昇したが(施行群2.4±1.1,非施行群1.9±0.7 mg/dL)その変動は両群ともに有意ではなかった.RCNは施行群で2例(22%),非施行群で7例(18%)にみられたが,その発症頻度に両群間で差はなかった.これら9例でのS-Crの変動はいずれも一過性であった.予防的CHDは,たとえ造影剤投与前から開始したとしても,腎機能障害者における造影剤腎症の発症を抑えることはできなかった.

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© 2009 一般社団法人 日本透析医学会
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