日本透析医学会雑誌
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原著
血液透析患者における二次性副甲状腺機能亢進症に対するシナカルセト投与が貧血に及ぼす影響
大坪 茂矢島 愛治内藤 順代石原 美和植田 修逸杉本 久之大坪 公子木全 直樹内田 啓子秋葉 隆新田 孝作
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2010 年 43 巻 6 号 p. 501-506

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抄録

【目的】エリスロポエチン抵抗性貧血の原因の一つとして,二次性副甲状腺機能亢進症が知られている.シナカルセトは2008年に日本で使用可能となった二次性副甲状腺機能亢進症に対する新しい薬剤である.今回,シナカルセトが腎性貧血における赤血球生成刺激剤の反応性を改善させるか検討した.【方法】シナカルセトを1年以上使用した20名を対象とし,開始前,開始後1,4,8,12か月後のintact parathyroid hormone(i-PTH),ヘモグロビン,トランスフェリン飽和率,CRPを比較した.赤血球生成刺激剤はダルベポエチンα(DPO)を使用し,その投与量も比較した.【結果】i-PTH値はシナカルセト開始前854±293 pg/mLと比較し,1か月後503±421 pg/mL(p<0.0001),4か月後402±371 pg/mL(p<0.0001),8か月後291±199 pg/mL(p<0.0001),12か月後283±243 pg/mL(p<0.0001)と有意に低下を示した.シナカルセト開始前のヘモグロビン値(10.2±1.2 g/dL),トランスフェリン飽和度(23.5±10.4%),CRP(0.27±0.35 mg/dL)は有意な変化は示さなかった.DPOの使用量は開始前24.0±16.7 μg/週で,1か月後23.5±16.9 μg/週,4か月後17.7±16.6 μg/週と徐々に低下した.開始前と比較し,8か月後15.0±20.1 μg/週(p<0.05)ならびに,12か月後14.0±16.4 μg/週(p<0.05)と有意に低値となった.シナカルセト投与によって二次性副甲状腺機能亢進症の改善とともに,赤血球生成刺激剤の投与量の減量が可能となった.シナカルセトは二次性副甲状腺機能亢進症を改善させることにより,貧血に対する赤血球生成刺激剤の反応性を改善させる可能性がある.

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© 2010 一般社団法人 日本透析医学会
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