日本透析医学会雑誌
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症例報告
ダルベポエチン休薬により血小板減少を認めた維持透析患者の2症例
―Erythropoiesis stimulating agent(ESA)投与中止が血小板数に及ぼす影響―
斎藤 孝子斎藤 修菅生 太朗上野 幸司山本 尚史佐々木 信博安藤 康宏武藤 重明草野 英二
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2010 年 43 巻 6 号 p. 523-530

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抄録

ESA中止後に生じる貧血以外の血球系変化,とくに血小板に対する影響についてほとんど報告されていない.今回,われわれはダルベポエチン休薬により血小板減少を認めた2例を経験し,ESA中止後の血小板数の変化について維持透析患者72例において検討したので報告する.症例1:59歳,女性.多発性嚢胞腎にて透析導入となり透析歴7年である.Hb 11.1 g/dL,Ht 37.4%,血小板(Plt)12.4万で,ダルベポエチン20 μgを中止した.その6週間後にはHb 6.7 g/dL,Ht 21.8%となり,Plt 6.5万と血小板減少も認めた.症例2:80歳,男性.ANCA関連糸球体腎炎にて透析導入となり透析歴は2年である.Hb 12.3 g/dL,Ht 37.4%,Plt 10.9万に達しダルベポエチン30 μgを中止した.2週間後にはHb 10.3 g/dL,Ht 35.9%であったが,Plt 5.0万と減少を認めた.2例とも透析条件・投与薬剤変更はなく,ほかに貧血および血小板減少をきたす疾患は認められなかった.ダルベポエチン再開後,血小板数は元のレベルに戻った.次にESA中止後の血小板数の変化について当院の維持透析患者72例に対してretrospectiveに検証した.2006年10月から2008年9月までの2年間において,28例において延べ37回(エポエチン中止17回・ダルベポエチン中止20回)の投与中止を行っていた.エポエチン中止者・ダルベポエチン中止者いずれにも休薬前の80%以下まで血小板数が減少する患者を認め,その比率には有意な相違は認めなかった.また,血小板減少患者において血小板数の変化はHbやHtの変化より早期に出現し,両者の間に有意な正の相関関係を認めた.ダルベポエチンに限らず,ESA中止時には貧血に先行して血小板数が減少する患者が一部存在しており,ESA休薬時には血小板数にも留意する必要があると考えられた.

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© 2010 一般社団法人 日本透析医学会
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