日本透析医学会雑誌
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症例報告
特発性コレステロール結晶塞栓症による急性腎不全発症後に塞栓の全身散布により死亡した1剖検例
甘利 佳史井上 勝博松尾 俊哉西原 学宣中野 龍治
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2010 年 43 巻 1 号 p. 87-92

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抄録

症例は高血圧,胸部大動脈瘤の既往とヘビースモーカー歴のある68歳,男性.1か月前より持続する食欲低下,5 kgの体重低下,全身倦怠感を主訴に近医を受診し,急性腎不全(s-Cre 7.6 mg/dL,BUN 78 mg/dL)と診断され当院紹介入院となった.好酸球増多(1,526/μL)および両足底,両足趾腹側に網状皮斑および暗紫紅色斑を認め(blue toe),同部皮膚生検にて細小動脈内に紡錘形~針状のコレステロール結晶(CC)を認めた.このため,コレステロール結晶塞栓症(CCE)と診断した.血液透析を導入し,導入後21日目に退院し,外来通院透析となった.しかし,退院13日後,両下肢疼痛が増悪したため再入院となった.その後より急激に全身状態は悪化し,再入院27日後に多臓器不全のため永眠した.剖検では大動脈壁にびらん性の粥状硬化変性がびまん性にみられ,肺,腎,小脳,脾臓,食道,胃,小腸,大腸にCCによる塞栓を認めた.肺のコレステロール塞栓に関し,循環器系に左右短絡路が認められなかったことや肺動脈と気管支動脈に粥腫が認められなかったことから,塞栓は前腕に造設した透析用内シャントを通じて肺へ到達した可能性が考えられた.本例は,抗凝固薬を使用する血液透析がCCEの増悪因子である可能性を示唆していると考えられた.

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© 2010 一般社団法人 日本透析医学会
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