農作業研究
Online ISSN : 1883-2261
Print ISSN : 0389-1763
ISSN-L : 0389-1763
研究論文
表面筋電位から見たトマトのハイワイヤー誘引栽培におけるつる下ろし作業の適正位置の解析
黒崎 秀仁大森 弘美高市 益行佐々木 英和
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 45 巻 4 号 p. 203-211

詳細
抄録

トマトのハイワイヤー誘引栽培におけるつる下ろし作業は,作業者にとって大きな負担となっている.本研究では模擬実験により,作業者と誘引線の位置関係によって生じる筋力負担の差を表面筋電位の測定によって検証した.まず,実際のつる下ろしの際に生じる持ち上げ負荷を調査した結果,6ヶ月間の平均値は45Nであった.次につる下ろし作業を想定した模擬実験を行い,被験者の積分筋電位(iEMG)を算出した.10箇所の筋肉部位のiEMGを比較した結果,作業台車のステップから誘引線までの高さ(誘引線高さ)の変化に対して顕著な反応を示した筋肉は,僧帽筋上部と三角筋前部であり,支持負荷の増加に伴いiEMGは直線的に増加した.片腕のみ,両腕の作業でもこの傾向は同じだった.作業高さに対するiEMGの反応も片腕のみと両腕の作業では同じ傾向だった.作業者の身長比に換算した誘引線高さに対するiEMGの反応は,僧帽筋上部では身長比0.45~0.55付近,三角筋前部では身長比0.6~0.65付近が極小値となったが,実際の作業環境を想定した場合,誘引線高さ身長比0.6~0.8の範囲がつる下ろし作業の適正作業位置と判断できた.水平距離に対する反応は,僧帽筋上部では不明瞭だった.三角筋前部では距離が離れるほど筋力負担が増大する傾向が見られた.しかし,距離が近すぎればトマトの葉に干渉して作業が困難になるため,最適な水平距離身長比は0.25~0.3程度と判断された.

著者関連情報
© 2010 日本農作業学会
前の記事 次の記事
feedback
Top