脳卒中
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症例報告
rt-PA静注療法後に舌の血管性浮腫をきたした心原性脳塞栓症の1例
田中 弘二松本 省二貴田 浩志小早川 優子田中 公裕川尻 真和山田 猛
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2010 年 32 巻 3 号 p. 296-300

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抄録

Angiotensin converting enzyme(ACE)阻害薬内服中,rt-PA静注療法直後に舌の血管性浮腫をきたした心原性脳塞栓症の1例を報告した.症例は75歳女性.高血圧症,慢性心房細動,慢性心不全に対しACE阻害薬(イミダプリル10 mg/日)内服中であった.来院時,意識障害,roving eye movement,右上下肢の不全片麻痺,重度の失語を認め,NIHSSは35点と評価した.頭部MRIにて左中大脳動脈領域に新鮮梗塞を認め,MRAにて左中大脳動脈M2以降の描出が不良であった.心原性脳塞栓症の診断で,発症から1時間43分でrt-PA投与した.rt-PA投与終了後,麻痺の改善を認め一時NIHSS 16点となったが,右優位の舌の著明な浮腫が出現し,メチルプレドニゾロン500 mg点滴投与を行った.rt-PA投与17時間後に意識障害の増悪,左不全片麻痺,右共同偏視が出現.MRIにて右中大脳動脈領域への脳梗塞再発を認めた.舌の浮腫は呼吸障害を起こすことなく36時間後には消失した.rt-PA投与後の血管性浮腫が舌に限局する場合は発見が遅れる可能性があり注意が必要である.

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© 2010 日本脳卒中学会
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