ウイルス
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Special Issue 3
コイヘルペスウイルス病
飯田 貴次佐野 元彦
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2005 年 55 巻 1 号 p. 145-151

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抄録

 コイヘルペスウイルス(KHV)病は1990年代後半にその存在が知られるようになってまたたく間に世界に拡大した.日本では2003年10月に初めて発生し,その後,養殖コイだけではなく天然河川・湖沼のコイにも大きな被害を出し,5月20日現在42都道府県でKHV病の発生が報告されている.KHVはコイだけに感染し,近縁のキンギョでさえも感染しない.感染したコイは元気なく泳ぎ,外観症状としては目が落ち込み,鰓の肥厚・壊死が特徴的で,内臓には顕著な病変はみられない.KHV病の発生好適水温は18~23℃で,水温が13℃以下あるいは28℃を超えると死亡はみられなくなる.30℃以上での飼育で治癒するものの,キャリヤーとなる可能性がある.低水温では免疫を獲得することができず,水温が上昇すると再発する.ウイルスの分離が困難であることから,診断は疫学情報,症状に加え,PCR法によってKHV遺伝子を検出することで行われている.KHVに汚染されている地域での養殖の再開にはワクチンの開発が必須であり,現在研究が進められている.

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© 2005 日本ウイルス学会
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