日本血管外科学会雑誌
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症例
手のcompartment症候群をきたした上肢動脈血栓除去術の 1 例
斎藤 雄平添田 健湯浅 貞稔瀬戸崎 修司梶 彰吾長見 晴彦
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2007 年 16 巻 3 号 p. 589-592

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抄録

症例は77歳,男性.農作業中に左手の冷感,痛み,しびれを自覚.翌日に近医を受診し,当科に紹介となる.左橈骨動脈,尺骨動脈の拍動は欠如し,左手の著明なチアノーゼを認めた.発症より18時間程度経過していると推定されたが,虚血症状が強いため,緊急血栓除去術を施行した.術直後より,橈骨,尺骨動脈ともに拍動は触知可能となったが,左手の著明な腫脹が出現し,阻血症状が再出現したため,直ちに形成外科にて手背の筋膜切開術を施行した.筋肉は著明に腫脹し,虚血様の色調を呈していたが,十分な減圧が得られたと思われた.合併症をきたすことなく,術後25日目に退院した.上肢の血栓除去後に,手に筋膜切開を要するような症例に遭遇することは稀と思われるが,本症例のようにcompartment症候群をきたすこともあり,注意深い観察と筋膜切開も念頭に置いた的確かつ迅速な術後の対応が必要と思われた.

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