2010 年 19 巻 3 号 p. 505-508
大動脈腸管瘻で一次性大動脈腸管瘻はまれな病態である.今回胃がん全摘手術後に発生した一次性大動脈腸管瘻で,しかも人工血管を被覆する自己組織の欠如した症例を経験した.症例は74歳の男性で,大量下血による一時ショック状態となり紹介される.造影CTで大動脈腸管瘻を疑い,緊急開腹手術を行った.十二指腸と大動脈の交通を有する大動脈腸管瘻を確認し感染が明白でないことから,十二指腸と大動脈瘤壁を一塊として切除し,十二指腸再吻合・人工血管移植術を施行した.術後早期に,軽快退院した.造影CTによる診断と血行動態が安定している早期に手術に踏み切ることが大切である.また胃がんの手術等で大網の欠如した症例に生物学的組織を使用した症例を経験し,良好な結果を得た.