紙パ技協誌
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研究報文
木質系バイオマスを原料としたバイオエタノール生産のためのアルカリ前処理(第2報)
―未利用および廃棄物系木質バイオマスのバイオエタノール原料としての適性―
池田 努杉元 倫子野尻 昌信眞柄 謙吾細谷 修二島田 謹爾
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2009 年 63 巻 5 号 p. 581-591

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抄録

現状では有効利用が十分進んでいない未利用材や建設発生木材に相当する木質バイオマスを用いたアルカリ前処理および酵素糖化を行い,これら木質系バイオマスのバイオエタノール原料としての適性を検討した。
樹皮が残ったままのスギ枝は,スギ材に比べるとグルコース収率はやや低かったが,バイオエタノール原料として十分に使用することができると考えられた。フェノール樹脂接着剤が使用されたPWは,アルカリ前処理により接着剤のほとんどを除くことができたと考えられ,酵素糖化が阻害されることはなくスギ材と同様の高いグルコース収率を与えた。このためにこのようなPWは,バイオエタノール原料として適すると考えられた。メラミン・ユリア共縮合樹脂接着剤が使用されたPBは,スクリーン粕が多く発生したために,パルプ収率を上げることができなかった。さらにパルプ中にも接着剤由来と考えられる物質が残存したために,酵素糖化はあまり進まなかった。ユリア樹脂接着剤が使用されたMDFは,パルプ収率は高かったが,アルカリ前処理により接着剤やリグニンを十分に取り除くことができなかったために,酵素糖化はほとんど進まなかった。スギ葉は,アルカリ前処理の過程で可溶化した部分の割合が高くパルプ収率は10%程度しか得られなかった。さらに酵素糖化もほとんど進まずスギ葉あたりのグルコース収率はわずか2.8%であったために,スギ葉はバイオエタノール原料として適さないと考えられた。

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© 2009 紙パルプ技術協会
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