2010 年 64 巻 5 号 p. 493-499
平成18年後半,政府は2030年までに国産バイオマスを原料としてガソリン使用料の1割を代替できるバイオエタノールを製造することを目標に掲げ,その中で木質から生産するエタノールを目標200万kLとした。この200万kLのエタノールを製造するためには,約400万tのセルロースが必要となるが,そのような莫大なセルロースを生産できる技術は紙パルプ業界以外にあり得ない。よって,森林総研はソーダアントラキノン蒸解法で製造したパルプを酵素糖化と発酵によりバイオエタノールに生産する技術の開発に着手し平成20年に秋田県北秋田市に実証プラントを建設するに至った。プラントは平成21年6月に完成し,その後数度の実証運転を行いいくつかの問題点を抽出した。それらの中で,糖化・発酵工程におけるパルプ懸濁液の輸送や撹拌は,エタノールの生産効率に大きく影響する問題であった。