木材学会誌
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総説
心材形成の化学
今井 貴規
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2012 年 58 巻 1 号 p. 11-22

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抄録

樹木が10年程の齢に達すると,幹や枝などにおいてその中心部から心材が形成される。心材の特性が色調・におい・耐久性など木材の諸性質を左右するといった木材利用上の興味に加え,樹木が心材を形成する意義の理解ならびに心材形成の機構の解明といった植物基礎科学的な興味が,長い間研究者を心材研究・心材形成研究へと向かわせてきた。心材形成は生物学的・化学的・物理学的変化を伴う複雑な樹木生理現象である。中でも化学的な変化となる,心材に特有な物質すなわち心材成分の新生・堆積は,これら化合物自体が色・におい・対生物活性を持つことが多いため,直接的に心材特性の発現に結び付けられ得る,心材形成時の最も顕著な変化現象と言えよう。本総説では心材形成について,主に「心材成分の堆積」に着眼して生理学的見地,生化学的見地,組織(化)学的見地,分子生物学的見地等から解説する。

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© 2012 一般社団法人 日本木材学会
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