化学工学論文集
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分離工学
多成分吸着熱を考慮した消化ガスの吸着貯蔵量の評価
姫野 修司仲沢 敦史小松 俊哉藤田 昌一澤原 大道
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2005 年 31 巻 1 号 p. 41-50

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抄録

5種類のメタンなどのガス吸着に適していると考えられる活性炭を用いて消化ガスの吸着貯蔵量の評価を行った.特に本研究では,消化ガス貯蔵における吸着熱の貯蔵量へ与える影響を明らかにし,活性炭の発熱による温度上昇を考慮した消化ガス吸着貯蔵量の評価を行うことを目的とした.まず,それぞれの活性炭について消化ガスの主成分であるメタン,二酸化炭素の単成分吸着等温線を測定し,Toth式および拡張Toth式で解析を行った.次に,求められたパラメーターを用いてIdeal Adsorbed Solution Theory(IAST)でメタン,二酸化炭素混合ガスの2成分吸着量の予測を行った結果,実験値と誤差7%以内で一致した.また,IASTを用いて消化ガスの吸着量を評価することが可能かを検討するため,実際の消化ガスの吸着量とIASTにより求めた消化ガス組成のメタン,二酸化炭素混合ガスの吸着量を比較した結果,両者は8%以内で一致し,IASTにより消化ガスの任意の温度,組成,圧力での吸着量の予測が可能であることを確認した.さらに,貯蔵容器内を断熱状態と仮定し,吸着熱による貯蔵容器中心部の温度上昇を考慮した貯蔵量の計算方法を示し,従来の圧縮貯蔵との貯蔵効率の比較を行った結果,消化ガス貯蔵に適した活性炭を用いれば消化ガスを0.7 MPaで充填すると32 Kの温度上昇が予測されたが,圧縮貯蔵に比べ,0.3 MPaで16倍,0.6 MPaで10倍の貯蔵量を得られることを明らかにした.さらに,パイロット試験機を用いて実消化ガスを0.3, 0.5, 0.7 MPaで貯蔵した際の活性炭の温度上昇結果とを比較した結果,両者は3 K以内で一致した.

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© 2005 公益社団法人 化学工学会
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