大陥胸湯と大陥胸丸料の現代における適応について検討した。頸,肩,背部に難治性のこりを自覚する33例に対して,いずれかの方剤を投与した。24例は4週以上服薬できたが(長期群),9例は中断した(中断群)。長期群においては14例(58%)で主訴の改善を認めた。有用であった方剤は大陥胸湯13例,大陥胸丸料1例であった。長期群の特徴は中断9例に比較して,BMIがより大きく,腹力はより強く,心下鞕陽性例が多かった。甘遂末投与量は長期群0.81g,中断群0.57gと有意差を認めた。副作用は嘔気18例,下痢6例を含む24例(73%)27件で,両群に差はなく,甘遂の中止,減量によりただちに軽快した。
改善例の中で,肩背のこり疼痛を主訴とする2例,身体表現性障害,うつ病,痙性斜頸,胃食道逆流症各1例の経過を記した。大陥胸湯と大陥胸丸料は,頸,肩,背部の強いこりを有する症例には,より広く用いられて良いと考えられた。