2005 年 46 巻 11 号 p. 647-652
近年本邦におけるE型急性肝炎は, 渡航歴のない国内発症例が増加してきており, そのHEV株がそれぞれの地域に特有の土着株であることが明らかになってきた. 今回, 渡航歴のない感染経路不明の散発性E型肝炎の1例を経験した. 症例は50歳男性. 海外渡航歴, 輸血歴, 性交渉, 最近の生肉の摂取歴はなかった. 2004年6月発熱および全身倦怠感が出現. 市販の感冒薬を服用するも軽快せず, 近医を受診, 著明な肝機能障害を指摘され当科紹介入院となった. メシル酸ガベキサート・プロスタグランジンE1で加療し, 肝炎は沈静化, 第22病日に退院となった. IgG, IgM-HEV抗体陽性およびHEV-RNA陽性により急性E型肝炎と診断した. HEVはgenotype IIIで既報日本株に一致ないし酷似するものがなかった.
HEVは日本国内に広く定着し感染経路として生の獣肉が有力であるが, 多くの症例で感染経路が明らかになっておらず, genotype解析等による解明が望まれる.