肝臓
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症例報告
多発肝膿瘍と鑑別を要した胆管過誤腫の1例
則武 秀尚影山 富士人竹平 安則山田 正美吉井 重人室久 剛吉田 賢一岩岡 泰志寺井 智宏魚谷 貴洋渡邉 晋也平良 章子小林 良正
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2007 年 48 巻 8 号 p. 370-376

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抄録

症例は77歳男性.平成17年9月下旬に発熱および食思不振が出現し紹介受診した.来院時に炎症反応と肝胆道系酵素の上昇を認め入院した.胆道感染症を考え第三世代セフェム系抗生剤投与を開始したが白血球上昇と発熱が続いた.入院2日目のMRI検査にて肝両葉に多発する小嚢胞性病変がみられ,一部の嚢胞周囲に造影効果を認めた.画像所見からは多発肝膿瘍も否定できずカルバペネム系抗生剤への変更と抗真菌薬併用を行ったところ炎症反応は改善した.入院1カ月後および半年後の造影MRI検査では入院時に認められた嚢胞周囲の造影効果は消失したが,依然として肝両葉に多発する小嚢胞性病変がみられた.臨床経過及び画像所見から胆管過誤腫を基礎疾患とした胆管過誤腫の感染と考えられた.胆管過誤腫は通常無症状であるが感染を合併すると多発肝膿瘍との鑑別に苦慮する場合がある.本症例は臨床経過および画像所見の経過から診断に至った貴重な症例と考えられた.

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© 2007 一般社団法人 日本肝臓学会
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