肝臓
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症例報告
原発巣に対する肝動脈化学塞栓療法(TACE)を契機に肺転移巣の消失を認め,7年以上無再発の肝細胞癌の1例
福嶋 浩文柴山 隆男菱木 智山本 千佐子岡田 洋一
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2011 年 52 巻 1 号 p. 56-64

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抄録

症例は69歳,男性.入院時,著明な腹水貯留と両下腿の浮腫を認め,AFP,PIVKA-IIの上昇を認めた.胸部レントゲン,CT,および血管造影検査で,肝右葉の巨大肝細胞癌,肝部下大静脈および肝内門脈右前上区域枝の腫瘍塞栓,肝内転移,肺転移と診断した.原発巣に対して2度の肝動脈化学塞栓療法(TACE)を施行した結果,腫瘍マーカーは正常値内に改善し,約2カ月後の腹部CT検査で肝細胞癌の消失を確認した.注目すべきは,肺転移に対する直接的な治療は施行していないにもかかわらず胸部CT検査で肺転移巣の消失も確認された点であり,第2回TACEから7年後の現在に至るまで肝細胞癌の再発は認めていない.また,本症例は経過中C型慢性肝疾患に対してインターフェロン(IFN)治療を施行し,IFN治療終了後2年6カ月以上HCV-RNAが陰性化しウイルス学的著効が得られたことより,今後の肝細胞癌再発リスクの低減が期待される.

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© 2011 一般社団法人 日本肝臓学会
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