2009 年 66 巻 7 号 p. 250-258
放射線架橋を利用し,多孔性ポリスチレン粒子(PSD)にペクチンおよびトリアリルイソシアヌレート(TAIC)を固定した.放射線は 60Co からの γ 線を用い,2.5~25 kGy の範囲で照射し,PSD に吸着した TAIC およびペクチンを架橋重合させた.ペクチンおよび TAIC 固定化 PSD のメチル-2-ベンツイミダゾールカルバメート(MBC)に対する吸着性能を評価した.固定化による MBC の吸着性能の向上については,低 pH では,TAIC の効果が大きく,高 pH では,ペクチンの効果が大きかった.ペクチンおよび TAIC 固定化 PSD の MBC 吸着量はペクチンおよび TAIC を固定化しなかった PSD に比べて 1.3~3.9 倍(pH 3~11 領域)になった.また,ペクチンおよび TAIC 固定化 PSD は,10 回の吸着・脱離実験後においても吸着能力は持続した.pH により親水性と疎水性の特性をもつペクチンおよび TAIC を γ 線により導入したペクチンおよび TAIC 固定化 PSD は,広範囲の pH 領域において MBC の高い吸着性をもち,従来の分析で必要だった pH 調整の処理を省いて MBC を抽出できることがわかった.