Papers in Meteorology and Geophysics
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海底地震計を用いた2004年紀伊半島南東沖の地震の余震観測
山崎 明青木 重樹吉田 康宏小林 昭夫勝間田 明男阿部 正雄森脇 健大河原 斉揚長田 芳一松岡 英俊吉田 知央関谷 博新納 孝壽平松 秀行
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2008 年 59 巻 p. 65-82

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抄録

   2004年9月5日に紀伊半島南東沖で発生した地震(Mj7.4)は南海トラフ軸付近で発生した津波を伴う大地震である。この地震の発震機構は南北方向に圧縮軸を持つ逆断層型で、フィリピン海プレート内あるいは上部マントルで発生したものと解釈されている。我々はこの地震の詳細な余震分布とその時空間推移を調査するため、自己浮上式海底地震計(OBS)による余震観測を実施した。余震観測は2004年9月から2005年8月までの期間、断続的に3回にわたって実施された。震源決定に用いた1次元P波の速度構造はOBSの観測海域で実施された速度構造探査結果を参照して求めた。また震源の決定精度を向上させるため、PS変換波を用いた堆積層補正をおこなった。その結果、気象庁一元化震源に比べ詳細かつ高精度な余震分布を得ることができた。OBS観測から求めた余震の震源は気象庁一元化震源と比較すると、深さは20kmほど浅く5~30kmに分布し、震央については全体的に南東方向に10kmほどシフトした。気象庁一元化震源では余震活動は主にトラフ軸より陸側に分布するように見えていたが、主たる余震活動はトラフ軸沿いで発生していることがわかった。また、余震活動は深さ5~10 kmの比較的浅い地震群と、深さ15~30kmの比較的深い地震群の2群に分かれていることが見出された。前者は余震域の中央部から北部にかけてのフィリピン海プレート内およびその上部の付加体内で発生しており、後者は前震および本震の破壊域と思われる海溝軸下の上部マントルで発生していることがわかった。さらに、浅い地震群の中にいくつかの地震クラスターが見出された。これらの地震クラスターは付加体からフィリピン海プレート内までほぼ鉛直に下降しているとみられる。これら余震域の中で発見された地震クラスターは、超低周波地震の発生源となっている付加体の分岐断層との関係において興味が持たれる。

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© 2008 気象庁気象研究所
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