西日本皮膚科
Online ISSN : 1880-4047
Print ISSN : 0386-9784
ISSN-L : 0386-9784
症例
グルカゴノーマ症候群の1例
前島 英樹松本 京子宮崎 千春金子 聡三好 経子平松 正浩向井 秀樹庄古 知久角田 幸雄
著者情報
ジャーナル 認証あり

2001 年 63 巻 1 号 p. 37-41

詳細
抄録

57歳,男性。1995年頃より主に両下腿に激しいそう痒を伴う難治性の皮疹が出現。1997年11月当科初診時には,腹部主体に膿痂皮を伴う環状,類円形の紅斑を認めた。角層下膿疱症と考え,レクチゾール®内服を開始。皮疹は若干改善したが,1ヵ月後体重減少が出現し皮疹も再燃した。皮疹と臨床経過より,グルカゴノーマ症候群を疑った。血清グルカゴン値は,1740pg/mlと異常高値。 MRIでは膵体尾部と肝臓に腫瘍像を認めた。切除標本より,膵体尾部原発で肝臓に転移を伴うグルカゴン産生腫瘍と診断した。術後の経過は順調で,血清グルカゴン値は正常となり皮疹および腫瘍の再発を現在のところ認めていない。壊死性遊走性紅斑の基礎疾患としてグルカゴノーマの有無が問題となる。壊死性遊走性紅斑の既報告例と自験例の皮膚症状を検討したところ,高グルカゴン血症,即ちグルカゴノーマの症例では,そう痒を伴う率が高く脱毛は少なかった。一方,高グルカゴン血症のない症例ではそう痒を伴う率は低く脱毛が多かった。

著者関連情報
© 2001 日本皮膚科学会西部支部
前の記事 次の記事
feedback
Top