2009 年 58 巻 4 号 p. 703-707
大腿骨転子部骨折後に大腿骨頭壊死が生じるのは稀である.今回,我々は1例を経験したので文献的考察を加え報告する.症例は49歳男性.風呂場で転倒受傷.転位のない右大腿骨転子部骨折を認め,CHSを施行した.術後10週目より右股関節痛出現.13週目骨頭の圧壊を認め大腿骨頭壊死の診断,CHSの抜釘施行.その後も圧壊の進行を認め18週目に人工骨頭置換術を施行した.大腿骨転子部骨折後の大腿骨頭壊死の報告は様々である.粉砕を伴うなどの高エネルギー外傷時,不適切な内固定に伴う転位時及び整復操作時の血管損傷が主な原因とされている.発生頻度は0.07~0.81%との報告があるものの大腿骨転子部骨折の治療の際,合併症として大腿骨頭壊死を念頭に置く必要がある.