日本食品科学工学会誌
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乳酸菌発酵魚肉すり身のアンジオテンシンI変換酵素阻害活性
金 山小川 有香渡辺 隆夫森本 理一郎大田 祥子清木 雅雄宮本 拓
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2007 年 54 巻 4 号 p. 160-166

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抄録

乳酸菌の代謝機能を応用した魚肉発酵ソーセージの開発研究の一環として,乳酸菌による発酵魚肉すり身のアンジオテンシンI変換酵素(ACE)阻害活性を検討した.ホッケ,イトヨリダイ,スケソウダラおよび混合すり身をLactobacillus delbrueckii subsp. lactis 306701で発酵し,ACE阻害活性を調べたところ,ホッケすり身の乳酸発酵物のACE阻害活性(90.0%)が最も高く,スケソウダラすり身では認められなかったためすり身に用いる魚の種類によって,ACE阻害活性に違いが生じたと考えられた.
ホッケすり身塩溶性タンパク質溶液を使用して乳酸菌16株を用い,乳酸発酵物のACE阻害活性を測定し,同時に,ACE阻害活性に及ぼす発酵温度と発酵時間の影響を調べた.その結果,使用した乳酸菌によって乳酸発酵物のACE阻害活性に差異が認められ,乳酸発酵物で高いACE阻害活性を示すPediococcus acidilactici ID7(阻害率,47.6%)とLactobacillus plantarum 6214(阻害率,40.6%)を見出した.また,乳酸発酵物のACE阻害物質は乳酸菌の生育に伴い生成され,本研究の実験条件下では発酵時間の経過によりACE阻害活性が高くなり,過度の発酵では低下することが示された.
発酵したホッケすり身のACE阻害活性とアミノ化合物の増加量を調べたところ,ACE阻害活性はホッケすり身中のタンパク質が接種した乳酸菌およびホッケすり身由来の菌によって分解を受けて生じたペプチドなどの物質による可能性が示唆された.

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© 2007 日本食品科学工学会
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