日本食品科学工学会誌
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ホイップドクリームの物性に及ぼす気泡の大きさと脂肪球凝集の影響
井原 啓一丸屋 美樹尾崎 裕司嶋田 康伸浅野 祐三岩附 慧二
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2007 年 54 巻 4 号 p. 173-180

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抄録

1.保存時のホイップドクリームの変形抵抗性はホイップ速度が大きくなると低下,すなわち保形性が低下する傾向が見られた.
2.ホイップ速度140rpm調製品では,脂肪球凝集率の変化が変形抵抗性に与える影響が大きく,200rpm調製品では,オーバーランの変化が変形抵抗性に大きく影響を与えると推察された.すなわち,ホイップドクリームの保形性は,脂肪凝集率とオーバーランの両方の影響を受けると推察された.
3.ホイップ速度140rpm調製品では,連続相粘度が低下するにつれてオーバーランが低下し,200rpm調製品では,脂肪球凝集率が低下するに従ってオーバーランが低下する傾向であった.
4.ホイップ速度200rpm調製品では,脂肪球凝集率が減少するに従って気泡径が増加した.脂肪球凝集体が気泡表面より離れ,気泡表面が力学的に不安定な状態になることにより気泡径が増加し,オーバーランの減少につながっている可能性があった.一方,140rpm調製品では,保存中の気泡径の変化が小さく,脂肪球凝集率と気泡径との相関が無かったことより,脂肪球凝集体は気泡表面から離脱することなく,気泡表面が力学的に安定であると考えられた.
5.脂肪球凝集体,気泡がホイップドクリームの保形性に与える影響に関するモデルを考察すると,140rpm調製品の保形性変化は,連続相中の脂肪球凝集ネットワークの変化が原因であり,200rpm調製品の保形性変化は,気泡表面からの脂肪球凝集体の離脱が原因であることが推察された.

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© 2007 日本食品科学工学会
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