理論と方法
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特集 社会と選択
合理的選択と共感的想像力
土場 学
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1992 年 7 巻 2 号 p. 2_25-2_43

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抄録

 ホッブズ的秩序問題に対し功利主義的社会理論が提示する解決策について、パーソンズは、「合理性」という理論の中心的概念を安易に拡張することによって問題を解決したかのごとく装っているだけだ、と批判した。しかし、もしそうだとしても、ホッブズ的秩序問題を解決する際に功利主義的社会理論は合理性概念以外にどのようなものを暗黙裡に要請しているのか。本稿の目的は、この問題を論理的なレベルで解明することである。そして本稿では、功利主義的社会理論が提示しうる2つの解決策、すなわち「設計主義解法」と「自生主義解法」のいずれにおいても、その論理構造の背後には共通して、「共感的想像力」、すなわち、個々の行為者の様々な振る舞いを原則として常に新たな「意味」、あるいは新たな「ゲーム」を開拓する可能性のある行為として認め合う、という人々の態度、を根本的に前提していることを明らかにする。古典的な功利主義的社会理論は、合理性概念とともにこの共感的想像力をその豊かな人間理解のなかに織り込んでいたのであり、だからこそホッブズ的秩序問題が有意義な探求課題となりえたのである。

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© 1992 数理社会学会
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