2009 年 24 巻 6 号 p. 837-840
〔目的〕摂食・嚥下障害患者が鼻閉を生じた際の基礎的資料を得る目的で,表面筋電図と喉頭運動の時系列解析を用いて鼻閉状態の嚥下動態について検討した。〔対象〕研究に同意が得られた健常者10名(平均年齢22.3歳)とした。〔方法〕鼻閉の有無の2条件で水10 mlを飲み込ませ,嚥下反射が開始されるまでの随意運動の影響を強く受ける舌骨上筋群の活動持続時間,嚥下反射の影響を強く受ける喉頭運動の活動持続時間,及び随意的な嚥下の開始から嚥下反射の開始までの間隔である舌骨上筋群の活動開始から喉頭運動の活動開始までの時間について測定した。〔結果〕鼻閉有り条件は鼻閉なし条件に対し,舌骨上筋群の活動持続時間,及び舌骨上筋群の活動開始から喉頭運動の活動開始までの時間が有意に延長したが,喉頭運動の活動持続時間には有意差は認められなかった。〔結語〕鼻閉によって,嚥下反射が開始されるまでの随意運動の時間が延長し,嚥下前誤嚥の危険性を高めることが示された。