2003年4~11月に達古武沼の沖域で植物プランクトンの種組成と水質の季節変化を調査した。また,同年7月に沼内25地点で行った植物プランクトンの種の分布特性と環境因子との関連を,正準対応分析(CCA)により検討した。
季節変化については,4月下旬に単細胞性の黄金色藻の一種,6月下旬~7月上旬にかけてシアノバクテリアAnabaena smithii,8月下旬に緑藻Pandorina morum,9月上旬に珪藻Cyclotella spp.が順に優占するという明瞭な遷移がみられた。優占種の入れ替わりは,可給態窒素の量の変化や,降雨に起因する水柱の撹乱が関係していると考えられた。水平分布については,沼の南北で出現種に明確な違いがみられ,沼北ではシアノバクテリア,沼南では鞭毛を有する黄金色藻や緑藻が分布した。CCAにより,種の分布特性と環境因子との関連を検討した結果,pHとクロロフィルa濃度は沼北,アルカリ度,溶存態鉄濃度およびマグネシウムイオン濃度は沼南で高かった。本沼の夏季の植物プランクトン種の水平分布は,植物プランクトン種の炭素の利用形態の違いと対応することが示唆された。