陸水学雑誌
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特集:釧路湿原達古武沼の自然再生に向けて
達古武沼と周辺河川における魚類の分布特性と生息状況
針生 勤仲島 広嗣高村 典子
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2007 年 68 巻 1 号 p. 157-167

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抄録

 2003年7月から10月にかけて,釧路湿原の達古武沼と周辺河川における魚類の分布特性とその生息状況を調査した。達古武沼では,優占種はハゼ科のジュズカケハゼ,キュウリウオ科のイシカリワカサギおよびコイ科のヤチウグイの3種であった。砂泥地を好むジュズカケハゼは湖の広い範囲に分布したが,特に沿岸域で豊富であった。この分布は砂泥の底質と関連があると考えられた。回遊性であるイシカリワカサギは沿岸より沖合に広く分布した。ヤチウグイは浮葉植物のヒシ(Trapa japonica)が繁茂する場所で個体数が最も多かった。河川では,達古武川の上流から中流にかけてサケ科のアメマスとカジカ科のハナカジカが優占した。また,種類数は河川と達古武沼の合流域で最も多いことから,種の多様性の保全にとって,合流域は重要な水域であることが示唆された。達古武沼と周辺河川において生息が確認された9科24種の魚類について,環境省と北海道のレッドデータブックのカテゴリーを対応させた。その結果,絶滅のおそれのある野生生物としてリストに挙がっている種類の大部分は,出現個体数の多い魚類であった。従って,当該集水域における魚類の生息状況は良好であると考えられた。

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© 2007 日本陸水学会
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