2004年夏季に達古武沼54地点と流入流出河川8地点で水質を調査した。湖水中のNa+,Ca2+,K+,Mg2+,Cl-,SO42-,D-Fe,D-Mn,D-Siの平均濃度は,主たる流入河川である達古武川の濃度に強く支配されていた。沼内54地点で測定した変数のうち,TP,TN,Chl.a,SS,pH,DOは沼北一面で大発生するAnabaena spiroidesの分布を反映し,沼北が沼南より高かった。Na+,Cl-,D-Mnも達古武川の影響を反映し沼北が沼南より高かった。一方,SRP,D-Fe,DOC,DIC,Mg2+,Ca2+は沼南東で濃度が高かった。沼南の水質分布の不均一性を支配する環境傾度を明確にするため水質13変数を用い主成分分析を行った。第1主成分の因子負荷量はDIC,Ca2+,Mg2+,DOC,SRP,D-Feが高い正の,SO42-が高い負の値を示した。第2主成分ではNa+,Cl-,D-Mnが高い正の,D-Siが高い負の値を示した。第3主成分ではK+が高い正の値を示した。沼南の水質分布の不均一性は,第一に酸化還元的な環境傾度,第二に沼南の湿地や湧き水から涵養される水による環境傾度,第三に沈水植物群落が形成する環境傾度により支配されていると考えられた。