臨床血液
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症例報告
輸血後鉄過剰症に対するICL670 (deferasirox)投与により造血能の回復が得られた骨髄異形成症候群
岡部 寛鈴木 隆浩大森 司森 政樹上原 英輔畑野 かおる上田 真寿松山 智洋外島 正樹尾崎 勝俊永井 正室井 一男小澤 敬也
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2009 年 50 巻 11 号 p. 1626-1629

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抄録

新規経口鉄キレート剤deferasirox (DFX)は,1日1回の内服により効果的な除鉄作用が期待できる薬剤である。我々は,DFX投与により造血能の回復が得られた輸血後鉄過剰症症例を経験したので報告する。症例は75歳女性。MDS (RCMD)の診断で3年間にわたって赤血球と血小板輸血を受け,輸血後鉄過剰症に対するICL670 (DFX)の第1相臨床試験に参加した。DFX投与開始後,血清フェリチン値は継続的に低下し,効果的な除鉄が得られた。さらに投与開始約1年後から輸血頻度が減少し,17ヶ月目以降は輸血不要となった。その後もMDSに対する特異的治療を行うことなくHbと血小板数は漸増を続けているが,35ヶ月目に行った骨髄穿刺では異形成に明らかな変化は認めなかった。過剰鉄には造血系を障害する可能性があり,効果的な鉄キレート療法は一部のケースで造血機能改善という新たな効果を示すことが示唆された。

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© 2009 一般社団法人 日本血液学会
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