2010 年 51 巻 12 号 p. 1775-1780
症例は64歳男性。非寛解急性骨髄性白血病を化学療法により腫瘍量減量させた後に骨髄非破壊的同種骨髄移植を行った。生着確認後,移植後第42病日に消化管急性移植片対宿主病を発症,ステロイド投与を開始した。その後下痢の一時的な再燃はあったものの徐々に改善傾向がみられ,ステロイドを漸減した。第159病日に突然左下腹部痛を訴え,CTにて消化管穿孔と診断し回腸切除を施行した。術中所見では小腸の所々に潰瘍による硬結があり,潰瘍の一つに穿孔認めた。病理診断にて潰瘍部の腸管壁全層にN/C比の高い異型細胞のびまん性増殖認め,CD20およびEpstein-Barr-virus (EBV) encoded RNA陽性より同種造血幹細胞移植後のEBV関連移植後リンパ増殖性疾患と診断した。免疫抑制剤減量とrituximab投与により完全寛解となった。同種造血幹細胞移植後のEBV関連移植後リンパ増殖性疾患は比較的少なく,本症例のように消化管穿孔で発症する例は極めて稀である。