2011 年 52 巻 11 号 p. 1759-1764
2009年4月に発生した新型インフルエンザA(H1N1)が,基礎疾患を有する患者に対してどのような影響をあたえるのか不明のまま本邦においても9月にその流行期を迎えることになった。東京小児がん研究グループでは,血液・腫瘍疾患患児においてこの新型インフルエンザがどのような影響をあたえるのか,その情報をできる限りリアルタイムに共有することを目的に「新型インフルエンザ罹患情報共有システム」を構築した。報告内容を患者の基本的情報以外はインフルエンザの診断方法,治療,転帰,フリーコメントにとどめ,簡便に報告できることに主眼をおいた。情報の共有化を速やかに行うことができ,本システムが有効に機能したことが確認された。合計115例が報告されたが,重篤な状態となった症例はみられなかった。今回パンデミックとなった新型インフルエンザは,血液・腫瘍疾患患児に対して強い影響を与えることなく終息したと考えられる。