産業衛生学雑誌
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調査報告
医療系大学・専門学校学生における麻疹・風疹・ムンプス・水痘の血清抗体価の検討
吉田 典子津村 直幹豊増 功次佐川 公矯
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2007 年 49 巻 1 号 p. 21-26

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抄録

医療系大学・専門学校学生における麻疹・風疹・ムンプス・水痘の血清抗体価の検討―医療系学生のウイルス抗体価―:吉田典子ほか.久留米大学健康・スポーツ科学センター―臨床実習時の院内感染予防対策として,久留米大学医学部医学科・看護学科および久留米大学付属臨床検査専門学校の学生1,139名(男性417名,女性722名)において,麻疹,風疹,ムンプス,水痘のウイルス抗体価を測定した.麻疹は粒子凝集反応(PA法),風疹は赤血球凝集阻止反応(HI法),ムンプスと水痘は酵素免疫測定法(EIA法)を用いて抗体価を測定し,それぞれ128倍未満,16倍未満,0.5未満,0.9未満を感受性者とした.麻疹,風疹,ムンプス,水痘の感受性者はそれぞれ112名(9.8%),112名(9.8%),163名(14.3%),73名(6.4%)であった.感受性者率は,麻疹,風疹,ムンプスでは男女差は認めなかったが,水痘は女性で高値だった.全国平均と比較し,麻疹の感受性者率は同程度であったが,風疹の感受性者率は低い傾向にあった.自記式アンケートにより各疾患の罹患歴とワクチン接種歴を調査した.ワクチン接種歴ありと答えた者の中で感受性者は,麻疹11.1%,風疹6.8%,ムンプス18.3%,水痘7.5%だった.既往歴ありと答えた者の中で感受性者は,麻疹5.7%,風疹3.4%,ムンプス2.9%,水痘4.9%だった.回答者のうち罹患歴が不明と答えたものは,麻疹と風疹は50%以上,ムンプスと水痘は30%前後であった.ワクチン接種歴が不明と答えたものは,いずれの疾患においても約70~80%であった.感受性者に対してワクチン接種を勧めた結果,ワクチン接種率は99.1%だった.医療系の学生において,問診による麻疹,風疹,ムンプス,水痘の既往歴・ワクチン接種歴の有無にかかわらず,感受性者を少なからず認め,さらに既往歴,ワクチン接種歴は不明と回答するものが多かった.これは院内感染予防の観点から,ワクチンで予防可能なウイルス性疾患の医療系の学生における抗体検査とワクチン接種の必要性をあらためて確認するものである.
(産衛誌2007; 49: 21-26)

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