産婦人科の進歩
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症例報告
癌性腹膜炎との鑑別が困難であった結核性腹膜炎の1例
脇ノ上 史朗笠原 恭子山本 嘉昭長田 憲和
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2007 年 59 巻 3 号 p. 244-248

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抄録

肺外結核の一種である結核性腹膜炎はまれな疾患で,全結核の0.04~0.6%を占めるにすぎない.今回,われわれは癌性腹膜炎との鑑別を要し,組織学的に結核性腹膜炎と診断した症例を経験したので報告する.患者は62歳女性,4回経産,下腹部痛と便秘を主訴に当院を受診し,超音波検査およびCTにて腹水を認めた.腹水細胞診は陰性であったが,腹水中のヒアルロン酸とADA(adenosine deaminase)活性が高値を示し,また血清CA125も155.1U/mlと高値であった.しかし炎症所見は軽微で全身状態は良好であった.CT,MRI,PET-CT等の画像検査では,腹膜・胃体部の肥厚,腸間膜リンパ節の小結節などを認めた.われわれは結核性腹膜炎も疑ったが,腹水中の結核菌PCRは陰性で結核と診断をすることはできなかった.癌性腹膜炎,悪性リンパ腫,中皮腫などとの鑑別を要したが,確定診断を得られなかったため腹腔鏡下に腹膜生検を施行した.壁側腹膜と大網・腸管は強固に癒着しており,壁側腹膜・臓側腹膜には粟粒大,黄白色の小結節が多数,び漫性に散在していた.術中迅速病理組織診断にて結核性腹膜炎と診断した.その後,抗結核薬の4剤併用療法(リファンピシン,イソニアジド,ピラジナミド,エタンブトール)を開始し,胸水・腹水は消失し,血清CA125も低下した.原因不明の腹水貯留と腹壁肥厚を認めた場合,癌性腹膜炎と結核性腹膜炎の鑑別のために組織学的検査が必要である.〔産婦の進歩59(3):244-248,2007(平成19年8月)〕

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© 2007 近畿産科婦人科学会
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